女性のコレステロール

  • HOME
  • 女性のコレステロール

 

悪玉の質とは(LDLコレステロールはコレステロールの他に
リノール酸やEPAなどの脂肪酸を運んでいる)

脂質はそのままでは血液中に溶け込みませんので、コレステロールだけでなく脂肪酸もリン脂質やコレステロールエステル、中性脂肪の成分としてリポ蛋白という複合体を形成します。肝臓で作られたVLDLは、中性脂肪をはずしながらIDL、LDLへと変化します。
LDLコレステロールはコレステロール比率が高く悪玉、HDLコレステロールは蛋白が多く、コレステロールが少ないリポ蛋白で善玉といわれています。
ところが、LDLコレステロールが高くても動脈硬化が進んでいない方が日本人には多いのです。このことは悪玉、つまり日本人のLDLコレステロールの質が良いことになるのです。

では、何故そんなことがいえるのでしょうか?
LDLコレステロールの量を決めているのは文字通り遊離コレステロールとエステル化したコレステロールですが、コレステロールエステルには脂肪酸が含まれており、酸化され易いかなどの質を決めているのは脂肪酸です。
通常、LDLコレステロールの主な脂肪酸はリノール酸でこの場合は酸化され易いのですが、日本人は魚を多く摂取するため、LDLコレステロールのリン脂質やコレステロールエステルの脂肪酸にEPAやDHAが取り込まれます。
そのため、日本人のLDLコレステロールは必ずしも悪玉にはなりきっていないのです。
いずれにしてもLDLコレステロールは細胞膜の成分となるコレステロールだけでなく脂肪酸を運んでおり、動脈硬化が進むかどうかはケースバイケースといえるのです。

LDL-Cと頸動脈球部最大IMTとの関係(LDL-C180以上で厚みが増しています)

LDL-Cと頸動脈球部最大IMTとの関係

LDL-C別にみるとLDL-C180以上で頸動脈球部の1.5mm以上のプラークが急増します

LDL-C別にみるとLDL-C180以上で頸動脈球部の1.5mm以上のプラークが急増します

LDL-C別にみた頸動脈球部の最大IMTです。閉経後女性のLDL-C基準値が180以上で良いことが分かります

LDL-C別にみた頸動脈球部の最大IMTです。閉経後女性のLDL-C基準値が180以上で良いことが分かります

頸動脈球部のプラーク形成の背景にはリノール酸高値が関係

頸動脈球部のプラーク形成の背景にはリノール酸高値が関係

LDLなどのリポ蛋白はリン脂質やコレステロールエステルの成分にリノール酸、アラキドン酸、EPA、DHA

LDLなどのリポ蛋白はリン脂質やコレステロールエステルの成分にリノール酸、アラキドン酸、EPA、DHA

EPAはLDLのリン脂質やコレステロールエステルの成分で、LDL-Cの質を決めます

EPAはLDLのリン脂質やコレステロールエステルの成分で、LDL-Cの質を決めます

悪玉の質を決める脂肪酸はリノール酸などの必須脂肪酸

LDLコレステロールのリン脂質やコレステロールエステルには必須脂肪酸であるリノール酸やアラキドン酸などのn-6系不飽和脂肪酸が、また、日本人のように魚を摂取する人種では、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などのn-3系不飽和脂肪酸も成分として、LDLコレステロールを構成しています。
ということは、EPAを薬剤として服用すれば、EPAはLDLコレステロールの中に取り込まれます。その結果、EPAやDHAの動脈硬化抑制作用により、日本人では動脈硬化が進まない例が多いのです。
したがって、LDLコレステロールが高いからと直ぐに治療する必要はないのです。

当院では頸動脈エコーと脂肪酸分析を行い、治療方針を決定しています。
尚、LDLコレステロールと関係が深いのはリノール酸で、中性脂肪を上げるのはオレイン酸、パルミチン酸、HDLコレステロールを下げるのはオレイン酸です。
オリーブ油の使い過ぎには注意しましょう。

日本人でもリノール酸が高いと冠動脈イベントが増加しました

日本人でもリノール酸が高いと冠動脈イベントが増加しました

頸動脈球部最大IMT(BCA)はリノール酸濃度に依存してプラークを形成します

頸動脈球部最大IMT(BCA)はリノール酸濃度に依存してプラークを形成します

動脈硬化はn-6系不飽和脂肪酸と正相関、要するにリノール酸が悪玉です

当院で行った研究では、非高血圧女性の頸動脈エコーと脂肪酸の関係ではジホモγリノレン酸の血中濃度が高いと総頸動脈、リノール酸の血中濃度が高いと頸動脈脈球部の動脈硬化が進むことがわかりました。また、一方でLDLコレステロールについては180mg/dL以上になると動脈硬化が進行する例が増えてきます。このことはこれまでの女性を対象にした疫学研究の結果と一致します。

ところで、非高血圧症の日本人ではLDLコレステロールとEPA、DHAが正相関、つまりLDLコレステロールが高い人でEPA、DHAが高いという例が多いのです。このことが日本人のコレステロールの特長で、コレステロールのリスク性を低下させている大きな要因です。

ただし、高血圧症では、LDLコレステロールとEPA、DHAとの正相関はありません。その結果、LDLコレステロールはリノール酸のみと正相関することになり、より悪玉になるといえるのです。
コレステロールが心配な方は、血清脂肪酸を測定してください。
治療が必要な方はそう多くはありません。特に女性では。

脂肪酸、コレステロール
脂肪酸
脂質、脂肪酸、コレステロール

新ガイドライン発表 LDLコレステロール180mg/dL以上は注意!

日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012がやっと発行されました。
今回、第7章治療法 B)薬物療法の2「一次予防においても、LDL-Cが180mg/dL以上を持続する場合は、薬物療法を考慮する。」と初めてLDL-C180mg/dLが記載されました。
また、2007年版で「一次予防において、3~6ヶ月、生活習慣の改善・・・」と記載されていたのが、2012年版では「一次予防において、生活習慣の改善・・・」と記載され、期間設定がなくなりました。

今後は、LDL-C140~179mg/dLについては、少なくとも頸動脈エコーで実際の動脈硬化を確認の上、治療の要否を決めることになるでしょう。
女性のLDLコレステロール180mg/dL以上は注意!

血清脂肪酸

コレステロール低下薬は脂肪酸も低下させる

LDLコレステロールの量を減らすスタチンは脂肪酸の減少をともないます。当院のデータではリノール酸やパルミチン酸を中心に低下させます。肝臓でのコレステロール合成を抑制するだけでなく、脂肪酸合成にも影響を与えるようです。